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子どものネットトラブル~重要性を増す保護者の役割

パソコンや携帯電話、スマートフォンを使いこなしてインターネットを活用する子どもたちは頼もしい。しかし、社会経験が少ないこともあって、さまざまなトラブルに遭遇しがちなことも確かだ。高額の架空請求やコミュニティサイトの罠に落ち、大きなダメージを受けてしまうケースもある。親として子どもを守るために何ができるかを考えたい。

子どものネットトラブル--親の心配、子の悩み
執拗な「架空請求」--解約に必要と個人情報送らせる手口増加
「交際」トラブル--写真等を送ってしまい後悔する例増加
コミュニティサイトの被害児童数は出会い系サイトの4倍
保護者に求められる役割--フィルタリングと家庭内ルール

子どものネットトラブル--親の心配、子の悩み

日本PTA全国協議会は、小学5年生と中学2年生、その保護者合わせて9600人を対象に「子どもとメディアに関する意識調査」(注1)を行い、今年5月に調査結果を発表した。それによると、携帯電話・PHSを持っている子どもは、小学生23%(昨年度は20%)、中学生45%(昨年度は40%)で、小中学生とも昨年度より増加している。また、家庭でパソコンを持っている割合は小中学生とも8割を超え(うち9割はインターネットに接続)、小学生の67%、中学生の72%が家庭のパソコンを親と共有で使っている。

小中学生が携帯電話やパソコン経由でインターネットを利用することはすでに日常といえるが、そこにはさまざまな危険が潜んでいる。図1は、子どもの携帯電話・PHS利用に対し、保護者は何を心配しているかを尋ねたものだ。最も多いのは、「メール機能等の悪用や学校掲示板などによるいじめや恐喝」で、次に「料金を使い過ぎてしまう」「勉強や授業に集中できなくなる」「有害なサイトにアクセスする」「子供の交友関係を親が分からなくなる」「親への隠し事が増える」「出会い系サイトなどから性犯罪等に巻き込まれる」などが続く。



図1 保護者が子どもの携帯電話・PHS利用について心配な点
出所 「子どもとメディアに関する意識調査」日本PTA全国協議会、2012年

では、実際に子どもはどのようなトラブルにあっているのか。子どものネットトラブルの相談窓口「こたエール」(注2)に寄せられた相談例から、その実態にアプローチしてみたい。 図2は、「こたエール」に寄せられた相談内容について、直近の2012年5月分を円グラフにしたものである。ここでは、第1位の「架空請求」、および深刻な問題になりやすい「交際」トラブルの2つについて、詳しく見ていくことにしよう。



図2 「こたエール」に寄せられた相談内容(2012年5月分)
出所 「こたエール」の月別統計情報から作成。書き込みトラブル(「ネットいじめ」+「名誉毀損等」+「削除方法」)。メール関連(「スパム」+「チェーンメール」)

執拗な「架空請求」--解約に必要と個人情報送らせる手口増加

「架空請求」相談が最も多いことは、「こたエール」がサービスを開始した2009年から変わっていない。2009年度は中学生本人の相談の42%、高校生本人の相談の53%、2010年度は中学生の相談の39%、高校生の相談の51%が架空請求だった。小学生からも2009年度は8件、2010年度は56件の架空請求相談が寄せられている。
「架空請求」とは、ご承知のとおり、迷惑メールのURLやアダルトサイトの画像をクリックしただけで高額料金を請求されること。「こたエール」の相談事例を見ると、ほとんどは子どもが興味本位で、あるいは巧妙な仕掛けに誘導されてボタンをクリックし、「会員登録しました」という画面と同時に、高額な料金と支払い期限を提示され、驚いて途方に暮れるという内容だ。「こたエール」のアドバイスは「無視」を徹底することで、請求が執拗な場合はメールの受信拒否で対応する。なかには、慌てて退会手続きをしようとし、サイトにメールや電話をしてしまうケースもあるが、その場合は、電話の着信拒否やメールアドレス変更を勧めることになる。
「こたエール」によると、アダルトサイトに「登録されてしまった」と焦らせ、退会申請に誘導し、学生証を要求するケースが増えているという。「未成年である証明に、学生証を写メで撮ってメールに添付するように言われ、送ってしまった」という女子の相談事例が挙げられている。子どもが自己判断でトラブルを拡大させてしまわないように、困ったことが起きたらすぐに身近な大人に安心して相談できるように、信頼関係を築いておきたいものだ。

「交際」トラブル--写真等を送ってしまい後悔する例増加

ネットで出会った相手とのトラブル相談は、子ども本人からのものにくわえ、保護者からの相談も目立つ。最近では、次のような相談が寄せられている。

○女子から:SNSで知り合った人にメールアドレスを教えてしまった。相手から出会い系サイトへの登録を勧められ、言われるままに18歳以上のサイトに登録してしまった。
○男子から:SNSで知り合い、毎日メールのやりとりをするぐらい仲が良くなった相手に住所を教えてしまったが、その後不安で仕方がない。
○保護者から:娘がネットで知り合った女の子と2人で会う約束をしている。電話とメールでやり取りしており、声も写真もの女の子だというが、危険を感じる。
○保護者から:娘がスマートフォンで男性とやり取りをしていたことがわかり、危険と思いスマートフォンを取り上げた。相手に学校や居住地域の情報や写真を送っていた。
○保護者から:娘がネットで知り合った人に、自分の顔写真を送ってしまった。相手は同性・同年代だと言い、写真も送られてきているが、本当かどうか不安だ。

上記のように、ネットで知り合った相手にメールアドレスや写真を送ってしまい、後から怖くなったという相談が増えているという。いったん送ってしまった写真などの個人情報はどのように悪用されるかわからない。また、保護者が感じているように、相手が自己申告通りに同世代の同性とは限らない。次節で見るように、コミュニティサイトでプロフィールを詐称することは、決して少なくないのだ。また、上記の相談例は不安の段階で、まだ現実のトラブルには発展していないが、実際に被害にあってしまい、強い後悔の思いを伝えてきた例もある。次に見るコミュニティサイトで発生した被害である。

コミュニティサイトの被害児童数は出会い系サイトの4倍

警察庁は今年5月、2011年下半期に検挙したコミュニティサイト(出会い系サイトを除く、いわゆる非出会い系サイト)に起因する事件の調査内容を公表した。2011年は、統計を取り始めた2008年以来初めて減少に転じたが、それでもコミュニティサイト起因の被害児童数は539人と、出会い系サイトに比べ約4倍にもなる。

2011年下半期に検挙された児童を被害者とする事犯は695件で、被疑者は536人。犯行の動機は、児童と性的関係をもつこと(71.2%)、児童のわいせつ画像収集(17%)、児童と遊ぶため(9.1%)と、「児童との接触目的」が97%以上を占める。この犯行動機は、被疑者がコミュニティサイトを選んだ目的からも明らかだ。図3の左の円グラフに示す通り、被疑者の目的は、多数の児童が登録している(27.8%)、児童とメールアドレスの交換ができる(16.8%)、プロフィール検索で児童を選べる(14.7%)、年齢・性別等が詐称できる(4.6%)、児童の顔写真が掲載されている(4.1%)などとなっている。いっぽう、児童側がコミュニティサイトを選んだ理由は、無料だから(49%)、友達のすすめ(25.5%)、ゲームができる(9.2%)の上位3項目で84%を占める。援助交際ができるからという理由をあげる児童もいるが、8.5%と少数だ。



図3 被疑者が当該サイトを選んだ理由(左)と、被害児童が当該サイトを選んだ理由
出所 「コミュニティサイトに起因する児童被害の事犯に係る調査結果について(平成23年下半期)」警察庁、2012年5月

被疑者の約4割(36.8%)は、児童を安心させるために、プロフィールを偽って接近している。詐称内容は、年齢のみ(61.4%)、職業のみ(15.9%)、年齢と職業(12.5%)、性別のみ(6.8%)、年齢と職業と性別(2.3%)などとなっている(図4)。


図4 被疑者のプロフィール詐称の内容
出所 「コミュニティサイトに起因する児童被害の事犯に係る調査結果について(平成23年下半期)」警察庁、2012年5月

被疑者の実際の年齢は、20~29歳(49.6%)が約半数を占め、次いで30~39歳(23.7%)、18~19歳(11.9%)、40~49歳(9.9%)と続く。児童と同じ年齢層の18歳未満はわずか3.5%で、50~59歳も1.3%存在する。いっぽう、被害児童のほうは、詐称ありは13.7%で、9割近く(86.7%)が詐称はしていない。

「娘がネットで出会った相手は同性・同世代だと言い、写真も送ってきているが、本当かどうかはわからない」と保護者が心配する例を前記したが、その心配は決して杞憂ではないことがわかる。同世代の女子と思って会ったら、高齢の男が現れたなどということが実際にあり得るのだ。ネットで知り合った相手に、子どもだけで会いに行くことは危険であることを、改めて認識しておきたい。

保護者に求められる役割--フィルタリングと家庭内ルール

コミュニティサイトの被害児童の92.4%は、携帯電話(スマートフォン含む)で当該サイトにアクセスしていた。その携帯電話にフィルタリングサービスが導入されていたのはわずか10.6%で、9割近く(89.4%)が導入していなかった(図5)。いっぽう、図6は、内閣府が満10歳から17歳までの青少年2000人と、同居の保護者2000人を対象に、個別面接調査で調べた携帯電話のフィルタリング利用率である(注4)。小学生で7割台後半、中学生で約7割、高校生で約5割が利用している。比較して、被害児童の携帯電話のフィルタリング導入率の低さがわかる。



図5 左:被害児童の当該サイトへのアクセス手段(携帯電話のうち、スマートフォンが7件7名) 右:被害児童の携帯電話のフィルタリングサービス導入の有無
出所 「コミュニティサイトに起因する児童被害の事犯に係る調査結果について(平成23年下半期)」警察庁、2012年5月


図6 携帯電話におけるフィルタリング利用率
出所 「青少年のインターネット利用環境実態調査」内閣府、2011年10月
この「フィルタリング利用率」には、フィルタリングを設定している場合のほか、インターネットに接続できない機種・設定の場合が含まれる。
「こたエール」では、トラブル相談の回答に、フィルタリング導入の重要性を説くことが多い。フィルタリングを導入していれば有害サイトをブロックしてくれるので、架空請求被害も予防することができる。架空請求では、アイドルや音楽情報など問題なさそうなサイトに罠が仕掛けられていることもあり、思いもよらない場面で突然に高額請求を受けたことで大きなショックを受け、泣きながら電話をかけてくる相談者も多いという。そうした予期しないトラブルにあわないためにも、子どもの利用にはフィルタリングは必須としている。

だが、フィルタリングを導入していれば百パーセント安全というわけではない。図7は、EMA(注5)が認定するサイトでの被害発生状況を示している。フィルタリングで遮断されないEMA認定サイトでも、残念ながらトラブルは発生している。


図7 EMA認定サイトに起因する被害発生状況
出所 「コミュニティサイトに起因する児童被害の事犯に係る調査結果について(平成23年下半期)」警察庁、2012年5月
コミュニティサイトでの被害を防ぐには、インターネットを利用するうえでの大原則を守ることが重要になる。「個人情報は書かない」「ネットで知り合った人には会わない」など。そうした原則を確認し合うと共に、ネットの利用時間や時間帯、携帯電話の利用限度額などを子どもと話し合って「家庭内ルール」を作り、守らせることが大切だ。

こうした家庭内ルール作りなど、保護者が子どものネット利用を管理する「ペアレンタルコントロール」は、今後ますます重要になる。政府は今、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画」の見直しを進めているが(注6)、見直しに当たって留意すべき課題として、①スマートフォンを始めとする新たな機器への対応、②保護者に対する普及啓発の強化、③国、地方公共団体、民間団体の連携強化、の3つを挙げている。②については、保護者が、青少年の発達段階に応じてインターネット利用を適切に管理できるようにするため、インターネット上の有害情報や青少年に対するインターネット上の危険性、それらへの対応方法について、保護者への啓発活動を、学校や地域社会で実施・支援するとしている。

小中学生にスマートフォンが必要かどうか保護者に尋ねた結果は、70%以上の保護者が「不必要」と回答している(注1)。しかし、携帯電話がそうだったように、スマートフォンを子どもが当たり前に使うようになる日はそう遠くないかもしれない。政府もスマートフォン対策を上記基本計画に含めているが、民間でも準備が進んでいる(注7)。保護者もそうしたコンテンツを参考に、子どもを守るための備えをしていく必要がありそうだ。


(執筆:現代フォーラム/熊谷)

(注1)「子どもとメディアに関する意識調査」日本PTA全国協議会、2012年3月
http://www.nippon-pta.or.jp/material/pdf/21_mediahoukoku.pdf
(注2)ネットや携帯電話などに関するトラブルに悩む子ども(18歳未満)のために、東京都が設置した専用総合相談窓口「東京こどもネット・ケータイヘルプデスク(愛称「こたエール」)」。2009年7月の開設時からの相談実績をまとめて公開している。
http://www.tokyohelpdesk.jp/index.html
(注3)「コミュニティサイトに起因する児童被害の事犯に係る調査結果について(平成23年下半期)」警察庁、2012年5月
http://www.npa.go.jp/cyber/statics/h23/H23deai-bunseki2.pdf
(注4)「青少年のインターネット利用環境実態調査」内閣府、2011年10月
http://www8.cao.go.jp/youth/youth-harm/chousa/h23/net-jittai/pdf-index.html
(注5)EMA(社団法人モバイルコンテンツ審査・運用監視機構):モバイルコンテンツの健全な発展と、青少年の発達段階に応じた主体性を確保しつつ、違法・有害情報から保護することを目的として、2008年4月に発足した第三者機関。フィルタリングの利用環境下で、青少年の利用に配慮したモバイルコンテンツの運用管理体制を認定している。
http://www.ema.or.jp/ema.html
(注6)「青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画(第2次)」(素案)の概要、内閣府、2012年5月
http://www8.cao.go.jp/youth/youth-harm/suisin/iken/pdf/bosyu01/s3.pdf
(注7)考えよう、ケータイ、スマートフォン(情報モラル授業プログラム)、NPO法人企業教育研究会
http://ace-npo.org/info/kangaeyou/kyouzai/smartphone.html



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