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今井恭司のサッカー千蹴写真館

森保一 ‐ カメラマンが選んだ1992年アジアカップMVP

1993年4月、対バングラデシュ戦の森保一選手

1993年4月、対バングラデシュ戦の森保一選手

この写真は、1993年4月11日、国立競技場で行われたFIFAワールドカップアメリカ大会アジア地区予選、日本代表対バングラディッシュ代表戦の森保一選手です。

「森保一? え、誰?」

森保一U-21日本代表監督兼日本代表コーチは、1992年4月に日本代表初の外国人監督となったハンス・オフトさんに見出されて、1992年5月31日キリンカップサッカーでのアルゼンチン代表戦で日本代表としてデビューしました。でも当時、本当に一番最初に森保一選手の名前が入った日本代表のメンバーリストを見た時、記者やカメラマン仲間は「え、誰?」ってなりました。名前の読み方がわからなかった。だからしばらくはそのまま「ぽいち」ってみんな呼んでいました。

 

サンフレッチェ広島の選手だったから、あまり見る機会がなかったこともあって、同じ年に広島県で開催されたAFCアジアカップで、眉唾でどんな選手か見定めようと、初戦のアラブ首長国連邦戦と2戦目の北朝鮮戦を見て、「いや、すっげーなこの選手!」ってみんなびっくりした。

 

何がみんなにそう思わせたかって言ったら、とにかくピッチの中を休むことなく動き回る豊富な運動量と、その動きの質がとてもいいんですよね。だから相手にボールを奪われた時でも、しっかりボールホルダーにプレッシャーをかけて、ボールを奪い返す。さらにボールを奪った後の処理とオフェンスへの繋ぎも抜群にうまかった。しかも的確にチャンスになるところにボールを展開していた。

 

この大会が始まる10月下旬から決勝戦の11月8日まで、僕ら取材仲間はずっと広島に滞在していて、毎晩毎晩お好み焼き食べて、ビール飲んで、オフト監督率いる日本代表の快進撃を肴にしながら「これさ、俺らでさ、日本代表の最優秀選手を決めようぜ!」みたいな感じで盛り上がって、カメラマンだけの特別賞を作って森保選手にあげようってことになった。

 

カメラマンだけの特別賞

僕らが賞品をあげるって言っても大したものじゃないから、みんなが撮ったアジアカップ期間中の写真の中から一番いいのを選んで、それをあげようってことにしたんです。それで決勝戦のサウジアラビア戦の前に、みんなで「どの写真がいいか?」って話になって、誰が撮った写真を選んだかすっかり忘れてしまいましたが──僕の写真じゃなかったのが残念だったけど──プリントして額に入れて、本人にあげたんです。

 

そうしたら森保選手も大喜びしてくれて、何年か経って僕も直接話した時に言われたんですけど、なにが一番うれしかったって言ったら、「カメラマンの仲間たちからそういう特別な賞をもらったのが一番うれしかったです」ってコメントを聞いて、「ああ、俺たちもたまにはいいことやるな、よかったな」と思った。意外とそういうことをちゃんと覚えていてくれるんですよ。義理堅いですよね。

 

AFCが選んだ大会最優秀選手は三浦知良選手でしたが、ピッチサイドでみているカメラマンからすると「MVPは森保だ!」って思うくらいの貢献ぶりだった。だからそれからはもう「森保って誰?」って誰も言わなくなった。だけど最初は本当に「森保一って誰?」って感じだった。無名って言ったら変だけど、「ああ、こういういい選手がいるんだな。まだまだ日本って捨てたもんじゃないな」ってみんな思ったもんです。

 

やっぱりあの時は監督がオフトさんだったっていうのがまた良かったですよね。オフトさんはマツダ(現サンフレッチェ広島)の監督だった時に森保さんを直接指導しているし、だからやっぱり見る目があるなと。もしオフトさんが監督じゃなかったら、おそらく日本代表にも招集されることはなかったでしょうし……。

 

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1992年10月、対アラブ首長国連邦戦での森保一選手

 

2012年サンフレッチェ広島の監督に就任

現役生活を終えて、下のカテゴリの代表チームやアルビレックス新潟でコーチをやって、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督のあとを継いで、サンフレッチェ広島の監督になったはいいけど、選手は取られるわ、なにはないわで、決して楽な状況ではなかった。でも毎年ちゃんと素晴らしいチームを作って仕上げてきたのはすごい。やっぱりただものじゃないです。

 

2012年にサンフレッチェ広島で監督のキャリアを始めて、6年間で3回のリーグ優勝。みんなここまで実績を残すとは思ってなかったでしょう。主力選手の移籍もあった中でしっかり立て直すところとか、元々下部組織の育成がしっかりしているクラブではあったけれど、トップチームの監督がしっかりしてないとなかなかああいう結果を残すことにはならないですからね。ミシャさんの遺産を引き継いでって言われるけど、森保さん独自のサッカー感も持ってやってるわけですから、それはすごいもんだなってあらためて感心しました。

 

選手の時も監督になってからも、この人は変わらないよね。淡々とって言ったら変だけど、日本代表に選ばれても監督に就任してからも、決して浮かれることなく、与えられた職を確実に全うするっていう感じですね。見た目はちょっと弱そうな感じだけど、きっと芯がすごく強いんでしょう。いつもニコニコしながらやっているけど、やっぱりこういう人って結構頑固じゃないけど、一本芯を持っていて、それが今ハマっているんでしょうね。

 

僕らメディアとのやり取りでも、決して派手じゃないけど、ちゃんとまじめに受け答えしてくれる。それこそちゃんと立ち止まって話を聞いてくれる人だから。話を聞いてちゃんと答えてくれるっていう姿勢はしっかりしていますね。今はちょっと……なんてことは絶対言わない。選手の時も優等生っていういい方はちょっとあれだけと、プレーでもトレーニングでも目の前のことをひたむきに一生懸命やるし、いつでもサッカーに対して真摯に向き合っている姿勢は素晴らしいと思います。

 

後篇につづく

 

※注 ワールドカップ壮行試合ガーナ戦(5/30)の国内合宿メンバーは5/18に発表予定。最終メンバー23人は5/31に決定する予定。その後2試合の国際親善試合(6/8スイス戦、6/12パラグアイ戦)を経て、6/14開幕の2018FIFAワールドカップロシア大会グループHで、6/19コロンビア戦、6/24セネガル戦、6/28ポーランド戦。

 

2018/5/16

提供:スタジオ・アウパ

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このコーナーは毎週水曜日の更新です。

次回は2018年5月23日(水)の予定です、お楽しみに!

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