PICK UP PLAYER

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「大学に入ってからプロと練習試合をしたり、一緒にプレーした先輩がプロに行くのを目の当たりにして、身近に感じるようになりました。その時期からですね。プロをめちゃくちゃ意識するようになったのは」

 静岡学園高校から順天堂大学に進学した名古新太郎は、1年から試合に出場し、長谷川竜也(川崎F)や新井一耀(千葉)など、卒業後にプロ入りした先輩たちとともに、研鑽を積んだ。3年になると、チームのキャプテンに就任。アントラーズへの加入内定が決まり、昨年8月の名古屋戦では、特別指定選手としてリーグ戦デビューも果たした。

 デビュー戦の結果は、2-4。わずか6分と限られた出場時間だったが、「これがプロの世界だと思う。チャンスをもらった中で結果を出せなかったのは自分の責任。次に切り替えてやっていくしかない。勝ち続けるしかないチームの一員である以上、そういう気持ちは強く持っていかないといけない」と、敗戦の悔しさを語った。このときには、すでに常勝鹿島の看板を背負う気概を強く感じさせている。

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 そして、迎えた2019年。大学No.1ボランチとの前評判をもってアントラーズへ加入した。当然、周囲からの期待は高い。指揮官も「自信をもってボールを持つことができる選手。ピッチのいたるところでそのような姿勢が見える。バランス感覚と攻撃のスイッチを入れるところのパス出しや前線に入っていくところを期待したい」と、その能力を高く評価した。本人も「優磨と健斗は同学年。もう若いといえる年ではない。自分の可能性は信じているので、1年目から結果にこだわる1年にしたい」と、加入初年度から即戦力として戦う覚悟を口にしていた。

 しかし、プロの世界は、そう甘くはなかった。ACLで第1節、第3節、第4節と先発出場したものの、大きなインパクトは残せず。開幕から4ヶ月が経過しても、リーグ戦の出場はゼロの状態。当初の目標であった「1年目から試合に出場し続ける」には到底及ばず、理想と現実の乖離に苦しむ日々を送った。

 6月14日、明治安田J1第15節・C大阪戦。試合に出場できない期間も弛まぬ努力を続けていた名古に、ようやくリーグ戦で先発するチャンスが巡ってきた。

「ここです。俺は。みんなから期待されているのは分かっています。もっと試合に絡んでいかないといけない。チームにとっても、個人にとっても、すごく大切な試合になります」

 指揮官も名古の想いを理解し、ピッチへ送った。

「彼はこの半年間、気持ちの部分で色々葛藤があったと思う。それも理解したうえで、これまでは準備期間だと思って、彼と接してきた。そういう意味では、思い切ってやることが大切になる。賢い選手なので、色々なことをインプットして、それをアウトプットすることができると思う。現段階での彼が持っている最大のパフォーマンスを試合で出してほしいーー」

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 並々ならぬ覚悟をもって臨んだ一戦。名古は同学年の三竿とコンビを組み、会心のパフォーマンスをみせた。66分で途中交代となったが、2-0の完封勝利に大きく貢献した。試合後、名古は充足感を感じさせる表情で「緊張感をもってできた。前半と後半で、出来た部分、出来なかった部分はあった。できなかった部分は、しっかり修正していかなければいけない。できた部分は、シーズン通してそれができるようにやっていきたい。チャンスはまた必ず来る。そのチャンスをまた掴めるようにしていきたい」と語っていた。

 待望のリーグ戦初先発を飾った背番号30は、ここから徐々に出場機会を増やしていく。ACLラウンド16第2戦・広島戦は左サイドハーフで出場し、自らの特長をしっかりアピールし、天皇杯2回戦・北陸大学戦では、本職のボランチで本領を発揮。明治安田J1第19節・仙台戦では、途中出場ながら得点に絡み、己の存在を改めて印象付けた。

 そして、7月20日の第20節・鳥栖戦から、ついにボランチとして先発に入る。確かな足元の技術で相手のプレスを剥がすと、機を見たドリブルで攻撃にアクセントを加え、勝利に大きく貢献した。つづく、ACLの日程調整の影響で延期されていた第16節・浦和戦、第21節・湘南戦と3試合連続でボランチで先発出場。「勝てずに悔しい」、「本当に悔しい」と、2試合連続で勝ち点を取りこぼす屈辱を味わったが、両試合とも中盤で存在感を放ち、己の存在をはっきりと示してみせた。

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 苦難を乗り越え、ようやく軌道に乗り始めた背番号30。だが、飽くなき上昇志向を抱く若武者は、全く現状に満足していない。目標はさらに高いところにある。

「自分がこれからのアントラーズを引っ張っていかないといけない。年齢も若くない。健斗もチームの中心として試合に出ているし、裕太も出場機会を増やしている。だから、自分もしっかりチャンスを掴んで、ピッチの中でも中心としてやっていけるようにならないといけない。自覚してます」

 背番号30が紡ぐ物語は、まだ始まったばかりだ。これからどのような成長曲線を描くのか。我々、アントラーズファミリーは、彼の確かな成長を信じ、これからも戦い続ける。名古新太郎とともに、新たな時代を築き上げよう。

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