Sony
Sony
メニュー
閉じる

旅行

富士山―信仰の対象と芸術の源泉

[No.17/世界遺産登録:2013年6月/文化遺産]

富士山が自然遺産ではなく文化遺産である理由は?

富士山は当初は自然遺産での登録が検討されましたが、環境の管理(主にごみ問題)が難しいため見送られ、その後、文化遺産としての登録運動が進められました。

2010年に示された世界遺産登録のための推薦書原案では、富士山の普遍的価値を「景観」「信仰」「芸術」の3つとし、登録対象は17の史跡でした。しかし、日本の千円札に描かれている本栖湖は、世界遺産の登録審査を行うIcomos(イコモス)が求める「国際的評価のある展望線」の条件を満たす可能性が最も高いということから、登録対象に含むことになり、その後、「なぜ本栖湖1湖だけが世界遺産になるのか」「富士五湖を含めないと富士山として不完全」という異見が相次いだため、登録対象は富士五湖(本栖湖、精進湖、西湖、河口湖、山中湖)全体に拡大。最終的には計25か所が世界遺産として登録されました。

名山としての景観

富士五湖から眺める富士山は素晴らしく、日本の紙幣の図柄として何回も使われてきました。また、富士山から45km離れた三保松原も歌川広重の「六十余州名所図会」に描かれるなど、美しい富士山を眺められる名所として知られていました。世界遺産の登録対象は景観をテーマに、当初の案から25か所に拡大されたため、距離的にかなりの広範囲に及びました。なお、各史跡をめぐるには路線バス「世界遺産めぐりルート」が便利です。

信仰の対象

富士山は太古から噴火を何度も繰り返してきました。平安時代の864年には貞観の大噴火が起こり、激しい揺れと轟音の中、溶岩流が湖を埋め尽くし、湖畔の村は焼き尽くされ、人々は「神が怒り、祟りを発したのだ」と恐れおののきました。そこで、富士山を神格化した浅間大神を祀る浅間神社(せんげんじんじゃ)が建てられ、富士山の霊を鎮め、噴火を止めてもらおうという浅間(せんげん)信仰が生まれました。浅間神社は静岡県、山梨県を中心に富士山を取り囲むように建てられ、約1,300社を数えます。

また、登山道が切り開かれるにつれ、修験道と結びついた富士修験と呼ばれる信仰も生まれました。修験道はこの世の全てのものに命や神霊が宿ると考える古神道に、自然を崇拝する山岳信仰や仏教が融合・発展し、日本各地の霊山を修行の場とする日本独自の宗教ですが、富士山にも多くの修験者(山伏)が集まりました。山中に建てられた寺を拠点に、彼らは悟りを得ようと険しい山へ籠もり、登山道を踏破し、滝行などの厳しい修業を行いました。

江戸時代後期には、富士山に登れば登るほど、健康や一族の繁栄などのご利益を得られるとされる、富士講(ふじこう)という民間信仰が大流行しました。講(こう)とは同じ信仰を持つ人々の結社のことで、富士講の講員は定期的に白装束を着て聖地・富士山に登りました。講の代表として参詣する代参という形式をとり、参詣できない講員は家の近くに「富士塚」というミニ富士山を造って、信仰の対象としました。そのため、都内には今も約50か所の富士塚があるのだとか。

浅間神社の総本宮で、富士講の人々も参拝した富士山本宮浅間大社をはじめ、富士信仰が育まれた数多くの史跡が世界遺産に登録されています。

芸術の源泉

富士山は古来より文学、絵画など多くの芸術作品のモチーフになってきました。都が京都にあり、富士が遠い地であった頃から、富士山を詠んだ和歌が「万葉集」や「古今和歌集」に収められ、「竹取物語」の舞台のひとつとして描かれました。

江戸時代になると葛飾北斎の「富嶽三十六景」、歌川広重の「不二三十六景」「冨士三十六景」など多くの作品が生まれ、たくさんの人々に愛されました。これらの浮世絵に描かれた富士山は西洋美術にも影響を与え、ヨーロッパではいわゆるジャポニスムの風潮が起こりました。近年の文学作品でも太宰治が執筆した小説「富嶽百景」をはじめ、多くの作品が生まれています。

このように、富士山が日本ひいては西欧の芸術に大きな影響を与えたことが世界遺産登録の理由の一つとなりました。


富士山域(ふじさんいき)の史跡













登録面積は19311.9 ha。山頂の信仰遺跡群、大宮・村山口登山道、須山口登山道、須走口登山道、吉田口登山道、北口本宮冨士浅間神社、西湖、精進湖、本栖湖、青木ヶ原樹海が含まれます。


富士山頂の信仰遺跡群

大宮・村山口登山道の山頂部にある浅間大社奥宮や、吉田口・須走口登山道の山頂部にある久須志神社など、山頂部には火口壁に沿って、神社や富士山信仰に関連する遺跡が点在します。また、富士山信仰の信者たちはご来光を見てから山頂の噴火口の外周を一周する「お鉢巡り」を行いましが、現在でも多くの登山者がこのコースを歩きます(2.6km 所要時間 約1時間半)


吉田口登山道(吉田ルート)

山梨県側のルートで山小屋の数が最も多く、途中2ヶ所に救護所があるため、最も多くの登山者が利用します。その分、登山者で混雑することも。
拠点は富士スバルライン五合目(標高2305m)、山頂は久須志神社(標高3720m)
登り7.5km(所要時間 約6時間)、下り7.6km(所要時間 約3時間)
富士スバルライン五合目へのアクセスは首都圏各所から五合目に直行する高速バス、もしくは富士急行河口湖駅より登山バスにて富士山五合目下車


須走口登山道(須走ルート)

古来からの登山道。標高2700m付近までは樹林帯や高山植物が生い茂るので、観察しながら登山できます。本八合目で吉田ルートに合流します。下りは七合目から砂の斜面を豪快に一直線に下ります。
拠点は須走口五合目(標高1970m)、山頂は久須志神社(標高3720m)
登り7.8km(所要時間 約6時間半)、下り6.2km(所要時間 約3時間)
須走口五合目へのアクセスは小田急線新松田駅もしくはJR御殿場線御殿場駅より登山バス


須山口登山道(御殿場ルート)

標高1440mからスタートするため、他のルートより距離も長く、標高差も大きい上級者向けコースです。大砂走りがあり快適に下山できるため、下山道としてのみ利用する人が多いです。
拠点は御殿場口五合目(標高1440m)、山頂は浅間大社奥宮(標高3715m)
登り11km(所要時間 約7時間半)、下り8.5km(所要時間 約3時間半)
御殿場口五合目へのアクセスはJR御殿場線御殿場駅より登山バス


大宮・村山口登山道(富士宮ルート)

静岡県富士宮市からの登山ルート。4つのルートで最も距離が短く、標高差が少ないため、吉田ルートの次に人気があります。登りと下りで同じ登山道を歩きます。
拠点は富士宮口五合目(標高2400m)、山頂は浅間大社奥宮(標高3715m)
登り5km(所要時間 約5時間)、下り5km(所要時間 約3時間半)
富士宮口五合目へのアクセスはJR線の三島駅・新富士駅・富士駅・富士宮駅のいづれかから登山バス


北口本宮冨士浅間神社(きたぐちほんぐうふじせんげんじんじゃ)

山梨県富士吉田市上吉田にある浅間神社。神社の沿道や吉田口登山道の山小屋で一斉に松明を燃やす、8月26日・27日の鎮火大祭(吉田の火祭)が奇祭として有名です。

富士急行線 富士山駅から徒歩約25分


西湖(さいこ)

西湖、精進湖、本栖湖は元々はひとつの巨大な湖で、富士山が噴火した時、溶岩流が流れ込み、最終的に3つの湖に分断されました。3つの湖の水位はいつも同じ高さなので、地下でつながっているのでは?と考えられています。西湖は山梨県南部、富士河口湖町の中央付近にあり、大きさは富士五湖では4番目です。


精進湖(しょうじこ)

富士五湖の一つで、0.5km2と五湖中最も小さい湖。富士参詣者が湖で沐浴して精進潔斎したことが名前の由来なのだとか(諸説あります)。


本栖湖(もとすこ)

富士五湖の一つで、五湖の最西端にある湖。日本の千円札に描かれている逆さ富士はこの本栖湖のものです。


青木ヶ原樹海

富士山の北西の山麓に30km2にわたって広がります。自殺の名所など禍々しい印象がありますが、実際は近くにキャンプ場や公園もあり、青木ヶ原を通り抜けられる遊歩道も整備されており、森と湖と富士山が組み合わさった景観も美しいのだとか。

静岡県の史跡

富士山本宮浅間大社(ふじさんほんぐうせんげんたいしゃ)

富士信仰の中心地です。祭神は木花之佐久夜毘売命(コノハナノサクヤビメ)で、木の花(桜の花とされる)が咲くように美しい女性という意味なのだとか。水の神でもあり、噴火を鎮めるために富士山に祀られたとされています。
本宮は静岡県富士宮市にあり、これとは別に奥宮が富士山村山口登山道頂上にあります。境内はとても広く、本宮社地は約17,000m2。富士山の8合目以上の約385万m2も社地として所有しています。

山頂の所有権を巡っては長年、駿河国、甲斐国、富士山本宮浅間大社で三つ巴の争いを繰り広げましたが、1609年に徳川家康が浅間大社のものであると認めました。明治維新後は山頂の所有権は国に移りましたが、これに反発した浅間大社は国を相手取って提訴。1974(昭和49)年、最高裁は浅間神社の訴えを認める判決を出し、富士山の頂上=日本で最も高い場所の所有権を持つことを認められました。


JR身延線 富士宮駅から徒歩約10分

富士宮駅北口より、富士急静岡バス万野粟倉循環線で約5分、湧玉の池下車

山宮浅間神社(やまみやせんげんじんじゃ)

所在地は静岡県富士宮市。富士山本宮浅間大社が創建される前に富士信仰の大神が最初に奉斎された神社で、大神が現在の浅間大社に遷された後、「山宮」となりました。浅間大社も含め、全国に約1,300社ある浅間神社のなかで最も古いものと考えられています。


富士山本宮浅間大社の鎮座地より北方約6キロ

村山浅間神社(むらやませんげんじんじゃ)

所在地は静岡県富士宮市。富士山村山口登山道にある浅間神社のひとつです。富士山を信仰する富士修験の中心地として発展し、多くの修験者(山伏)がここを拠点に修行を行いました。


JR身延線富士宮駅から車で約20分

須山浅間神社(すやませんげんじんじゃ)

静岡県裾野市にある、浅間神社の一社。


JR御殿場線御殿場駅から富士急シティバス十里木、ぐりんぱ、イエティ方面行バス約25分、津土井下車徒歩5分

JR御殿場線岩波駅から車で約10Km

冨士浅間神社(ふじせんげんじんじゃ)

所在地は静岡県駿東郡小山町。富士山須走口登山道の起点にある、浅間神社の一社で、江戸時代は東口登山道=須走口登山道の本宮として多くの人々で賑わいました。


JR御殿場線御殿場駅から富士急行バス(富士学校・河口湖行)約20分

人穴富士講遺跡(ひとあなふじこういせき)

所在地は静岡県富士宮市人穴。富士山とその神霊を信仰する富士講(ふじこう)の人々が指導者として崇拝した角行(かくぎょう)が、江戸時代に修業した場所です。人穴は聖地とされ、富士講信者が参詣し、修行を行いました。


JR身延線富士宮駅からバス(白糸線)約24分、白糸滝で下車後少し歩いて、白糸滝入口からバス(河口湖線)に乗換え約12分、畜産試験場北口で下車徒歩約35分。

JR身延線富士宮駅から車で約40分

白糸ノ滝(しらいとのたき)

静岡県富士宮市上井出にある観光地で、水量は毎秒1.5トン。幅200メートル、高さ20メートルの崖から絹糸を垂らしたように流れる様子からこの名が付きました。


JR身延線富士宮駅から富士急静岡バス(白糸の滝・足形・休暇村富士・猪の頭行き)約30分、白糸の滝観光案内所前もしくは白糸の滝」下車すぐ

東海道新幹線新富士駅から富士急山梨バス(富士山駅行き)約60分、白糸の滝入口下車すぐ

三保松原(みほのまつばら)

静岡県静岡市清水区の三保半島にある景勝地で、総延長7km、3万699本の松林が生い茂る海浜と、駿河湾を挟んで望む富士山や伊豆半島の美しい眺めが有名です。歌川広重の「六十余州名所図会」でも 駿河 三保のまつ原 として描かれています。


JR東海道本線清水駅、静岡鉄道静岡清水線新清水駅よりバス(しずてつジャストライン三保山の手線・三保方面行)で羽衣の松入口下車徒歩約15分

山梨県の史跡

河口浅間神社(かわぐちあさまじんじゃ)

所在地は山梨県南都留郡富士河口湖町。富士山の北麓で御坂山地を背負い、河口湖越しに富士山と対峙する場所にある、浅間神社の一社です。


富士急行河口湖線河口湖駅から、甲府行き、または大石プチペンション村行きバスで河口局前下車すぐ

冨士御室浅間神社(ふじおむろせんげんじんじゃ)

所在地は山梨県南都留郡富士河口湖町。富士山吉田口登山道の二合目に鎮座する浅間神社の一社です。


富士急行河口湖線河口湖駅から湖畔周遊レトロバス約10分 冨士室浅間神社下車すぐ

御師住宅(おしじゅうたく)旧外川家住宅(きゅうとがわけじゅうたく)

御師住宅(おしじゅうたく)小佐野家住宅(おさのけじゅうたく)

御師(おし)は江戸時代に流行した民間信仰、富士講(ふじこう)の指導者で、講員に登山に必要な食料や宿を提供し、講を組織するツアーガイド的な役割も担いました。外川家、小佐野家は代々、富士山の御師を勤めてきた家で、当時の富士山信仰の様子を現在に伝える貴重な建物です。なお、小佐野家住宅は非公開です。


御師住宅(旧外川家住宅)

富士急行大月線富士山駅から徒歩5分

山中湖(やまなかこ)

富士五湖のひとつ。山梨県南都留郡山中湖村にあり、湖の面積は6.57km2と富士五湖で最大です。湖面の標高も富士五湖の中で最も高く、日本全体でも第3位。相模川の源流でもあります。

河口湖(かわぐちこ)

富士五湖の中で最も長い湖岸線を持ち、最も低い標高地点、2番目の大きさの湖です。湖面に写る逆さ富士は絶景。

忍野八海(おしのはっかい)

山梨県忍野村にある湧泉群。富士山の雪解け水が地下の溶岩の間で、約20年の歳月をかけてろ過され、湧水となって8か所の池(出口池、お釜池、底抜池、銚子池、湧池、濁池、鏡池、菖蒲池)をつくります。なお、世界遺産では池ごとに構成資産IDが割り振られています。

船津胎内樹型(ふなつたいないじゅけい)

吉田胎内樹型(よしだたいないじゅけい)

溶岩が流れ落ちる際に樹木を取り込んで固まり、燃えつきた樹幹の跡が空洞として残った洞穴を溶岩樹型と言います。そのうち、内部の空洞の形が人間の胎内に似たものが「御胎内」と呼ばれて信仰の対象となり、「胎内巡り」と称して洞内を巡礼されるようになりました。船津胎内樹型と吉田胎内樹型は吉田口登山道に近接してあったため、富士山を信仰する人は登拝の前日にこの「御胎内」を巡って身を清めたと言われています。 なお、吉田胎内樹型は非公開です。

【船津胎内樹型(河口湖フィールドセンター)】
営業時間 9:00~17:00
休館日 月曜日(祝日は開館/6~8月は無休)
拝観料 高校生以上200円 小・中学生100円

富士急行河口湖線河口湖駅より富士山五合目行きバスにて県環境科学研究所下車徒歩5分。

中央道河口湖インターより、富士スバルラインに入り車で約10分。

ページの先頭