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「サクラサイト商法」新手口にご用心~スマホアプリを悪用

人の心の隙を突く「サクラ」を使ってメール交換に誘い込み、高額な利用料を請求するサクラサイト商法で、スマートフォンユーザーの被害が相次いでいる。急速に普及しているコミュニケーションアプリを悪用する手口で、国民生活センターが注意を呼び掛けている。射幸心や仲間意識を悪用した「対戦ゲーム」も新しい手口だ。同商法の典型的手口と新手口、被害実態、被害にあわない対策をまとめた。

■典型的手口と被害実態
    (1) 迷惑メールや無料SNSを利用して接触
    (2) サクラを使ってサイトへ誘導し登録させる
    (3) メール交換からポイント購入へ追い込む
    (4) 被害実態:大事な貯金や老後資金が底をつく
■新たな手口にご用心!
    (1) スマホアプリを悪用して初回接触
    (2) 仲間意識を悪用した「対戦ゲーム」
    (3) 「都度課金」から「定額制」へ
■被害にあわない対策
    (1) 対策の第一は「返信しない」
    (2) スマホアプリの安全対策
    (3) 「おかしい」と思ったら

■典型的手口と被害実態

サクラサイト商法の典型的手口では、次のような流れで一般ユーザーをサクラサイトに引き込み、短期間のうちに多額のポイントを購入させている。

(1) 迷惑メールや無料SNSを利用して接触
一般ユーザーへの最初の接触は、迷惑メールや無料SNSを利用して行われる。迷惑メールは、携帯電話などのメールアドレスに直接届くもののほか、内職や副業関連のサイト、懸賞・占いサイトなどに登録した後、その登録アドレスに届くことがある。SNSサイトでは、ユーザーが掲載したプロフィールや日々の書き込みに沿った内容のメッセージを寄せるなど、善意の人を装って近づいてくる。

(2) サクラを使ってサイトへ誘導し登録させる
迷惑メールやSNSのメッセージは、いわゆる「サクラ」が書いている。彼らは異性やタレント、社長、弁護士、占い師などのキャラクターになりすましてユーザーの気を引き、メール交換には登録が必要として業者サイト(サクラサイト)に誘い込み、登録させる。
ユーザーの気を引く手口の典型としては、出会いを目的とした「出会い型」、芸能人などの悩み相談に応じる「同情型」、遺産を受け取ってほしいという「利益誘引型」などがある。困っている人を助けたい、芸能人と話したい、多額のお金が手に入るかもしれないなど、人の善意や好奇心、射幸心をあおる形でメール交換に誘い込んでいる。

(3) メール交換からポイント購入へ追い込む
登録料や一定期間のメール交換は無料だが、話が盛り上がってきた段階で、有料ポイントを購入しないと相手と連絡がとれない状況に陥る。メールのやり取りだけでなく、掲示板や画像を見る際にも費用がかかり、サイト側からも「ランクアップ費用」「文字化け解除料」などさまざまな名目で料金を請求される。
費用が心配になってメール交換を止めようとすると、相手は「後日、必ずあなたのポイント代を支払う」「話を聞いてくれないと自殺する」など、さまざまな言を弄して止めることを思いとどまらせる。本人や周囲の人が「騙されているのでは」と気づくのは、たいてい高額な料金を支払ってしまった後だ。

(4) 被害実態:大事な貯金や老後資金が底をつく
同センターは、次のような被害事例を紹介している(注1)。

・「お礼をするので悩みを聞いてほしい」というメールに答えるうちに、わずか4日間で、クレジットカード、電子マネー、現金振込みで計約350万円も支払ってしまった。(50代女性)

・「メール相手と協力してサイトにお金を振り込むとみんなが幸せになれ、お金も返ってくる」と信じこまされた子ども(40代)が、自分の貯金だけでなく、親が蓄えていた老後資金6000万円も含め、計約8000万円もの大金を振り込んでしまった。(70代女性)

・有名タレント事務所の取締役や所属タレント、マネージャーらから「相談にのってほしい」というメールが届き、話を聞くうちにやり取りを止められなくなり、ポイントを購入し続けてお金を使い果たしてしまった。今は生活にも困る状態だ。(30代女性)

・婚活サイトに登録した後、「悪霊を取り除く呪文を教える」という陰陽師、タレント、300万円を渡したいという人などさまざまな人からメールが届き、やり取りを続けるために計約600万円を支払ってしまい、貯金が底をついた。(60代男性)

こうしたサクラサイト商法は、手口が巧妙化したり被害金額が増大したりするなど深刻化している。同センターは出会い系サイトのトラブルをまとめたデータをサクラサイト商法の参考として提示している(注2)が、同センターおよび全国の消費生活センターに寄せられた相談件数は2011年度で2万6304件(図1)、購入の平均金額は58万3248円(図2)だった。相談者の契約購入金額の合計は、2009年度は約78億円、2010年度は約103億円、2011年度は約109億円と、年々増加をたどっている。

図1 全国に寄せられる相談件数

図2 契約購入金額(平均金額)の推移

■新たな手口にご用心!

被害が深刻化するなか、同センターは今年5月から6月にかけて「詐欺的“サクラサイト商法”被害撲滅キャンペーン」を実施した。その一環として、弁護士による電話相談を全国32か所で行った結果、新たな手口による被害が発生していることがわかった。同センターが注意を喚起している新たな手口は次の3つで、これまで以上に短期間で高額の被害を生む可能性があるという(注2)。

(1) スマホアプリを悪用して初回接触
従来の手口では、ユーザーへの最初のコンタクトは迷惑メールやSNSのメッセージが使われているが、新しい手口ではスマートフォンの無料コミュニケーションアプリが悪用されている。このアプリは若い世代を中心に急速に普及しているもので、利用者同士が無料で音声通話やメッセージのやり取りができる。
図3のように、このアプリを利用したいユーザーは、まず自分の電話番号等を登録する。電話番号は公開されないが、アプリ側のサーバーでは電話番号に紐(ひも)づける形でユーザー登録がなされる。その上で、自分のスマートフォン等に登録している電話帳データをアプリ側に渡すことを許可すると、その電話帳から同じアプリを利用している人を見つけ、その人を友人リストに登録し、アプリを通して連絡をとることができる。

図3 無料コミュニケーションアプリで悪質業者から連絡可能になる仕組み


友人の輪を広げる便利な機能といえるが、サクラサイトの悪質業者がこれを悪用して見知らぬ人を友人登録し、初回コンタクトに使っていることがわかった。悪質業者はこのアプリにユーザー登録し、ランダムに作った電話番号リストを自分の電話帳データとしてアプリ側に渡す。アプリに照合させ、偶然一致した人を友人として登録する。このやり方で、その人(ランダムに作った電話番号が一致した人)への連絡が可能になってしまう。

同センターは、この方法でアプローチされ、被害にあった50代女性の例を紹介している。ある日、そのアプリに「連絡がほしい」というメッセージが届いた。自分の携帯電話番号かID(アプリ登録時に発行される)を知っている人しかこのアプリには連絡できないと思っていたため、女性は返信した。すると、「自分がマネージャーをしているタレントの相談にのってほしい」という返事があり、その後は従来の手口と同じ経緯をたどった。業者サイトに誘導されてポイントを購入しながら自称タレントとのメール交換を続け、「騙されたのでは」と気づいたときの被害は約30万円だった。

(2) 仲間意識を悪用した「対戦ゲーム」
ポイント購入を止めようとすると、役割分担した複数のキャラクターからメールが届き、冷静な判断ができなくなってしまう、いわゆる“劇場型”の手口は、従来のサクラサイト商法でも使われている。前述の「被害実態」の事例でいえば、有名タレント事務所の取締役や所属タレント、マネージャーらから次々にメールが届き、ポイント購入を止めることができなくなってしまった30代女性の例などがそれにあたる。

同センターは、この劇場型の新しい手口で被害にあった70代男性の例を紹介している。迷惑メールで誘導され登録した出会い系サイトで数人とメール交換をしていたところ、サイトから“ポイント購入対戦ゲーム”への参加決定通知メールが届いた。なぜか、メール交換していた人たちとチームを組んでゲームに参加することが決定していた。
勝てば高額賞金がもらえ、負けても購入ポイントの70%は返金されるという条件に安心し、少額のポイント購入から始めた。しかし、巧妙なゲーム展開に煽られて、結局約20万円もポイントを購入してしまった。止めようとするとチーム仲間から引き止められ、サイトからも「×時までにポイントを購入しないと棄権とし、全員に返金しない」などという連絡があり、男性は「仲間に迷惑がかかると思うとゲームを止められない」と悩んでいる。
男性が信じている「仲間」は業者が用意したサクラとみられるが、同センターはこうした仲間意識の利用や競争心、射幸心をあおる手口にも十分に注意が必要としている。

(3)「都度課金」から「定額制」へ
典型的な手口では、ゲームをしたり掲示板を見たりする度にポイント購入が必要となる「都度課金」だったが、新手口では一定期間の利用料を定額にするやり方が出てきた。被害事例では、「3日間100円」とサイトに書かれていたので利用したが、カード会社の引き落としは2万円。サイトの表示を確認すると、料金記載ページの下の方に「数日後から自動的に毎月2万円の月額制に移行する」と書かれていた。
同センターは、このように知らないうちに自動更新され、月額利用料が請求されるというトラブルが起きているので、携帯電話の限られた画面でも、表示や利用規約をしっかり確認するよう注意を促している。

■被害にあわない対策

サクラサイト商法の餌食にならないためには、知らない人からのメールには「返信しない」ことが第一だ。スマートフォンユーザーはアプリ設定を安全にし、ID公開を避けよう。トラブルになった場合、メールのやり取りや支払いの記録が証拠として力になる。

(1) 対策の第一は「返信しない」
サクラサイト商法の犠牲者にならないための対策の第一は、迷惑メールや知らない人からのメッセージには「絶対に返信しない」こと。悪質業者は不正入手したりランダムに作成したりしたメールアドレス宛てに膨大な量の迷惑メールを送信する。そこで返事があったメールアドレスは投網にかかった魚のようなもの。「有効な送付先」として悪質業者の標的になってしまう。相手は騙しのプロなので、思わず返信したくなるようなメールを送ってくるが、しっかり見抜いて騙されないように。

(2) スマホアプリの安全対策
スマートフォンのコミュニケーションアプリが悪質業者に悪用される例を前述したが、これはアプリの設定を変えることで防ぐことができる。登録ユーザー数が6000万人(国内2800万人)を突破した人気アプリ「LINE(ライン)」の場合、図4のように、「友だち管理」の設定で、「友だち自動追加」と「友だちへの追加を許可」のチェックを外す(オフにする)ことを検討しよう。

・友だち自動追加:これをオンにすると、自分のアドレス帳にある電話番号を使ってLINEユーザーを検索し、LINEの利用者がいれば、自動的に友だちとして登録する。問題点は、電話番号は所有者が変わることがあり、古い友人の電話番号が知らない人の電話番号に変わっている可能性があること。その場合、知らない人を友だち登録してしまうことになる。しかし、アドレス帳がしっかりメンテナンスされていてそうした心配はなく、かつLINEでも連絡しあうことを希望する場合は、オフにする必要はない。

・友だちへの追加を許可:これをオンにすると、他のLINEユーザーが自分の電話番号を検索することを許可するので、図3で示したように悪質業者からのコンタクトが可能になってしまう。こちらはオフにすることを強くお勧めしたい。

LINEとともに人気のアプリ「カカオトーク」では、「カカとも自動追加」がLINEの「友だち自動追加」に、「自動おすすめ」がLINEの「友だちへの追加を許可」にあたる。それぞれの機能で危惧されることも同じなので、「カカとも自動追加」は状況に応じてオンオフを判断し、「自動おすすめ」はオフにすることを強くお勧めする。

図4 LINEの「友だち管理」設定を安全に


設定のほかに注意したいのは、IDを公開すること。LINEやカカオトーク、同じく人気アプリの「Skype(スカイプ)」は、IDを交換して友達を探そうというコミュニティが多数存在する。そうした場でIDを公開すれば、悪質業者が接近する可能性は高まる。

IDを自ら公開しないと同時に、他者からIDを検索されないようにすることも大切だ。KDDIは今年9月からスマートフォン向けサービス「auスマートパス」利用者にLINEの提供を開始したが、未成年者の保護対策として、18歳未満の契約者には「ID検索機能」を自動で使えないようにしている。もちろんLINE利用者が手動で設定することも可能で、以下の手順でID検索を無効化できる。
<Android>
[設定]→[プロフィール設定]
「IDの検索を許可」のチェックを外す
<iPhone>
[設定]→[プロフィール]
「IDの検索を許可」を[オフ]に

カカオトークについても、「ID検索許可」をオフにしておこう。Skypeの安全対策については、日本語の公式ブログ(注4)を参照していただきたい。

(3)「おかしい」と思ったら
おかしいと気づいたとき、また高額の支払いをした後に納得できない場合、支払ったクレジットカード会社や金融機関に事情を伝え、すぐに消費生活センターや弁護士会、警察等に相談しよう。そのとき役立つのが、メールのやり取りや支払いの記録だ。サクラサイト業者は、もっともらしい理由でメール等を保存しないよう指示してくるが、携帯電話やパソコンに届いたメール、サイト内に残るメール、そして支払いの記録は可能な限り保存しておこう。後に裁判になった時も、こうした記録が力になる。
2011年8月8日、さいたま地裁越谷支部の判決では、出会い系サイト業者のサクラ行為を認め、利用料など約600万円の支払いを命じている。この判例が出て以降、サクラサイトの違法性が認識され、返金請求や裁判が増えているという。泣き寝入りせずに、被害を回復する道は開けている。


(執筆:現代フォーラム/熊谷)

(注1)詐欺的な“サクラサイト商法”にご用心!-悪質“出会い系サイト”被害110 番の結果報告から-(国民生活センター)
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20120419_2.html
(注2)速報!“サクラサイト商法”新たな手口にご用心!-性別・世代を問わず被害拡大の可能性も-(国民生活センター)
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20120726_2.html
(注3)NHN JapanとKDDI「auスマートパス」で「LINE」アプリの提供を開始(NHN Japan)
http://www.nhncorp.jp/press/2012/083052
(注4)安全にSkypeを使うために知っておくこと: スパムやトラブルから身を守る!Skype101(Skype日本語ブログ)
http://blogs.skype.com/2012/08/23/skype-skype101/



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