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スター・トレックJ・J・エイブラムスの才気が横溢し、フレッシュなスターたちの競演も楽しい、 SFアドベンチャー・青春成長物語。
 アメリカが生み出した数あるテレビシリーズのなかでも、もっとも知名度が高く、熱烈なファンを擁する「スター・トレック」が、『M:i:V』を手がけ、テレビシリーズ「LOST」や『クロ−バーフィールド/HAKAISHA』を仕掛けたJ・J・エイブラムスの手で、新たなイメージで蘇った。「スター・トレック」の壮大な世界は、これまでに6つのテレビシリーズ、10本の劇場用映画がつくられてきたが、エイブラムスはアメリカで1966年に放映された第1シリーズ(日本では「宇宙大作戦」の題名で放映された)の原点に戻り、再構築。リ・イマジネーション作品として送り出している。アメリカでは5月7日に公開されるや、5月17日時点で1億5000万ドルに達する勢いのヒットとなっている。

スター・トレック
 映画は、まず主人公ジェームズ・T・カーク誕生のエピソードから幕を開ける。USSケルヴィン号の船長代理であった父親は、航行中に謎の大型艦に襲われ、母と胎内にいる息子を救うために、自らを犠牲にする。それから22年、逞しく成長したカークは無鉄砲な青年になっていたが、父を尊敬する惑星連邦艦隊のパイクから「父を超える存在になってみろ」と諭され、艦隊に志願する。といってもカーク自身の性格が変わるわけではなく、抜群の適性を持ちながらトラブルメイカーの日々。士官昇任試験では不正行為を指摘され、謹慎を命じられたときに、惑星連邦艦隊に出動の命が下る。

 待機を命じられたカークだったが、パイク率いるUSSエンタープライズに潜り込む。パイクの下でサブリーダーを務めるスポックは、バルカン人の父と人間の母の間に生まれた理性と知性を旨とする若者で、直感を信じる直情型のカークを快く思っていなかったが、航行中にその関係は敵意に近いものになっていく。

 宇宙で起きた緊急事態がUSSケルヴィン号を襲ったものと似通っていることを直感で知ったカークの前に、異形の大型艦が姿を現す。指揮しているのはロミュラン人、ネロ。破壊を尽くすネロには怒りに燃える理由があった――。

スター・トレック
 ここからストーリーはさらに波乱に富んだ展開をみせていく。SF作品としても十分以上の面白さなのだが、さらに瑞々しい青春成長物語としての貌をくっきりと浮かび上がらせる。反抗児カークが自らの生き方を掴み取り、仲間たちを信じるようになるまでが、彼と反目するスポックの人間的な感情の目覚めと並行して描かれる。互いに相容れない存在と思っていたふたりが、強い絆で結ばれるようになるまでが、躍動感いっぱいに紡がれ、みるものに爽やかな感動すら与えてくれるのだ。さらにマッコイやスールー、スコット、チェコフなどなど、エンタープライズの仲間たちの出会いがバランスよく織り込まれ、シリーズを愛してきた人たちには応えられない楽しさとなっている。

 これまでつくられてきた10本の劇場用映画はいずれもシリーズの約束事、縛りから逃れられずに窮屈な仕上がりになりがちだったが、エイブラムスはオリジナルに敬意をはらい、その設定を取り入れながらも、主人公の駆け出し時代に焦点を当てることで軽々と“新しい”『スター・トレック』世界を生み出してみせた。このことによって、シリーズを知らずに来た人、熱烈なファンの如何を問わず楽しめる作品となった次第。エイブラムスのコンセプトのもと、脚本を担当した『トランスフォーマー』のロベルト・オーチーとアレックス・カーツマンの功績も大きい。オリジナルの世界と繋ぐ仕掛けもストーリーのなかにきっちりと埋め込まれている。その奥行きのある世界観とともに、ここから新たなシリーズが生まれることが実感させられる。

 溌剌とした語り口にふさわしく、出演者も新鮮さに溢れている。カークを演じるのはブラッド・ピットの再来との呼び声も高いクリス・パイン。スポックにはテレビシリーズ「HEROES/ヒーローズ」のザカリー・クイント。このふたりを囲んで『ミュンヘン』のエリック・バナがネロを演じ、スポックの母には『オータム・イン・ニューヨーク』のウィノナ・ライダー。さらに『バンテージ・ポイント』のゾーイ・サルダナ、『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』のカール・アーバンなど、個性的な顔ぶれである。

 もちろん、特撮を駆使した映像のスペクタクルも満載。爽やかな青春群像劇であり、パワフルなSF冒険活劇。エイブラムスの卓抜したセンスと演出に拍手が贈りたくなる。素敵な仕上がりである。

   (文/稲田隆紀)

© 2007 Paramount Pictures All Rights Reserved.



スター・トレック

監督・製作:J.J.エイブラムス

出演:クリス・パイン、ゾーイ・サルダナ、ザッカリー・クイント   他

5月29日(金)より丸の内ルーブル他全国ロードショー。

オフィシャルサイト


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