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心不全とリハビリテーション
−早期離床を目指すリハプログラム
特集にあたって
高齢者の増加に伴い,心不全の発生は着実に増えている.薬物療法や心疾患の治療技術の進歩は,従来救命しえなかった心疾患患者も救命できるようになり,次の段階として,障害をもったままいかにQOLの高い生活を送ることができるかがリハビリテーション(以下リハ)の目標となってきている.
心筋梗塞症を代表とする虚血性心疾患のリハは,わが国において主な医療機関で広く行われているが,心不全のリハアプローチはまだ十分に確立されていない.この理由は心不全の原因は単一でなく,いくつかの病態が重なりあって起こる結果,病状は変化しやすく,運動負荷による反応も一定でないことが多く,そのためより慎重な対応が求められているからである.
米国では,すでに軽症あるいは中等症の心不全に対しては施設ごとのプログラムがあり,数多くの文献でその適応とプログラムの実際が示されている.心不全のリハの結果,運動耐性が増加し,最大酸素摂取量は増加する.これらは中枢のポンプ機能の改善よりも,筋力低下が存在する心不全患者の末梢適応による酸化酵素活性の向上の結果と,それによる乳酸の蓄積が起こりにくい筋肉への変化が関係するといわれている.これは左室機能の改善がないにもかかわらず,有酸素運動能が増加することにより示される.
多くの心不全患者は低い無酸素閾値すなわちAT値が低く,低強度の運動ですぐに乳酸が蓄積し,運動の継続が不可能となるいわゆる運動耐性の低下の状態が存在する.心不全による安静臥床が筋肉を中心として廃用を進行させ,同一活動に対する酸素消費が増大し,それが心臓に負担をかけて心不全を悪化させる.そのような悪循環を断ち切るのが心不全のリハの目的となる.運動耐容能の改善は身体面のみならず心理面の改善にもつながり,うつや不安を軽減し,QOLの向上をもたらす.
もう一つ米国で心不全のリハが進歩した背景として,managed careによる在院日数の短縮の要請も見逃せない.一方,わが国の現状を振り返ってみると,「まずは安静から」という消極的な医療の風土もあり,この方面の取り組みも一部の施設を除いて遅れているのも事実である.その結果,多くの心不全患者は薬物治療による改善も安静による廃用により打ち消され,本来もっている運動能力を発揮できず,低いADLレベルにとどまることを余儀なくされている.その結果,入院期間は長期化し,退院時のADLレベルも低く,医療・介護の両面のコストも高くなることとなる.
昨今の医療改革の流れから,ようやくこの方面にも注目が向けられ始め,在院日数の短縮とADLの向上から,重度の心不全を除いて,あるいは重度であっても内容を限って,早期のリハが始められている.中等症から重症例,入院患者から外来患者へ,短期的治療の効果から長期的効果の証明など,適応が徐々に広げられるなかにあって,これらの変化に応えられるべくリハ医およびリハスタッフは心不全の病態の把握,薬物療法,検査結果の解釈などについて一定レベル以上の知識をもつと同時に,運動とりわけADL関連動作の心不全に与える影響を熟知してプログラムを作成していく必要がある.「心不全=絶対安静」という古い常識を打破し,「リハで何ができるか」という視点と各科への働きかけという意味もあり,この特集を企画した.
(編集委員会)
特集目次
心不全を発症する病態生理/北原公一
リハ患者に合併しやすい心不全とその対策/辻 哲也
心不全運動療法の適応と禁忌/大宮一人・伊東春樹
軽症心不全に対するリハプログラムの実際/牧田 茂
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