リハビリテーション医療者のための臨床誌 
Clinical Rehabilitation

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2001年9月

特集
ベッドサイドでみる深部静脈血栓症(DVT)ヘのアプローチ



DVTの病態と診断
岩嵜友視・岩井武尚
Key Words:深部静脈血栓症 診断 肺塞栓症

内容のポイントQ&A
Q1. DVTは日本でも本当に増えているのか?
 日本において大規模な調査・統計はなく正確なところは不明である.高齢化社会に伴う悪性疾患・長期臥位者・骨盤手術の増加,DVTに対する認識の高まりにより報告例が増えていることが予想される.
Q2. 発生機序と注意すべきリスクファクターは?
 Virchowの3因が血栓症の原因である.長期臥床あるいは下肢・骨盤手術による下肢静脈血のうっ滞により,血栓が形成される率が高くなると考えられる.特にthrombophilia(栓友病,血栓性素因)は,血栓症を生じやすく慎重な管理が必要となる.
Q3. 間違えやすい症状・疾患に何があるか?
 下肢の腫脹・色調変化・疼痛が主症状で,蜂窩織炎,表在静脈炎のほか,リンパ浮腫,筋(膜)炎・腱鞘炎などや外傷を鑑別に考える.
Q4. 画像診断はどこまで進歩したか?
 静脈撮影がgold standardとされてきたが,エコーでも50〜90%の診断率があり,無侵襲である.最近ではMR-V(MR−静脈撮影)が注目されている.
Q5. 突然死に至る肺塞栓症とは?
 静脈血栓の一部が遊離し,静脈血にのり,心臓を経由し肺動脈に塞栓症を起こすと肺塞栓症となる.塞栓症を起こした肺動脈の支配域が小さく限局されていれば無症候に経過するが,肺動脈塞栓が広範囲に及ぶとショック,突然死となることがある.



DVTの予防と治療
原 寛美
Key Words:深部静脈血栓症 予防 早期離床 弾力ストッキング 間歇的空気圧迫法

内容のポイントQ&A
Q1. 身近な予防法は?
 DVTの予防法としてまず考慮すべき対策は,早期離床と下肢の筋活動を伴う関節運動である.離床できない症例では,褥瘡予防と同じ位置づけで,数時間ごとの下肢関節運動を自動的ないし他動的に実施する.機械的な圧迫法として,弾力ストッキングの装着と,間歇的空気圧迫法が有効であるとされている.薬物使用としてヘパリンの予防的投与があげられるが,出血のリスクもあるためにAPTTの測定などのモニタリングを行う.脱水や便秘の改善など全身状態の管理も重要な予防法である.
Q2. DVTはいつ発症するか? DVT発症時の対応はどのようにするか?
 DVTの発症は,安静を要する重症患者では初期の1週間が最も多いとされる.発症時には,急性肺塞栓症の予防を目的に,患肢の安静,抗凝固療法(ヘパリン,ワーファリン)を開始する.超音波カラードプラにて中枢部血栓の状態を確認後に離床を再開する.下大静脈フィルターの植え込み例では翌日から離床再開が可能である.
Q3. いつ外科に依頼するのか?
 外科適応としてNYHA 3度以上の急性肺塞栓症例をきたした症例に対して,緊急の肺動脈血栓内膜摘除術の適応が考慮される場合がある.



脳卒中片麻痺にみられるDVT
原 寛美
Key Words:脳卒中片麻痺 二次的障害 深部静脈血栓症 D−ダイマー

内容のポイントQ&A
Q1. 疾患に特有なDVT発症メカニズムの特徴は?
 脳卒中患者においては,麻痺側肢の筋ポンプ作用の低下ないし消失,発症後の安静臥床(離床の遅延),血液凝固能の亢進因子の併存,中心静脈カテーテルの留置,便秘などにより発症が加速される.
Q2. DVT発症予防のための工夫は?
 下肢筋活動を早期に開始するために,下肢の挙上と足関節の他動的運動,早期離床による下肢への体重負荷,立位訓練の早期開始などに努める.さらに弾力ストッキングの使用,間歇的空気圧迫法,脱水の補正,便秘の予防などを包括的に実施して予防にあたる.
Q3. DVTがみつかったらどうするか?
 脳卒中発症後,少なくとも数日間の安静臥床を行っていた患者には,全例にDVTの有無をチェックすべきである.DVTの発症が診断された場合には,離床は一時中止し,抗凝固療法を開始し,中枢部のDVTが消失していることを確認してから離床を再開したい.離床の中断が望ましくない場合や抗凝固療法が禁忌である場合には,肺塞栓症予防のために下大静脈フィルターの留置を行い,翌日から離床を開始する.



脊髄損傷例にみられるDVT
古澤一成
Key Words:脊髄損傷 深部静脈血栓症 予防 リハビリテーション

内容のポイントQ&A
Q1. 脊髄損傷における深部静脈血栓症(以下,DVT)発症メカニズムの特徴は?
 一般的なDVTの危険因子に加えて,麻痺・術後の安静による血流うっ滞,静脈の伸展性・容量の低下,血流抵抗の増加,線溶系の活性低下などがDVT発症に関与しているとされる.
Q2. 脊髄損傷におけるDVT発症予防のための工夫は?
 欧米ではDVTの予防として低分子ヘパリン等の投与が行われているが,わが国においてはDVTの予防的薬物療法について統一した見解が得られていない.
 リハビリテーションに関しては,体位に注意し,早期から四肢他動運動を行う.弾性包帯による下肢の圧迫,空気による下肢の加圧などの予防法があるが,その有効性は確立されていない.
Q3. DVTがみつかったらどうするか?
 DVTが生じたら,その際はベッド上安静とし,速やかに薬物療法を開始する.線溶療法を行う場合は,2〜3日目に静脈造影にて効果判定を行い,効果が認められなければ血栓除去も考慮する.安静期間は部位(近位型か遠位型),症状(腫脹,疼痛など),静脈造影などを参考にして決定するが,その間は廃用の予防に努める必要がある.



人工関節置換術後にみられるDVT
藤沢基之・内藤正俊
Key Words:深部静脈血栓症 人工関節 間欠的空気圧迫装置 足底圧迫装置 大腿下腿圧迫装置

内容のポイントQ&A
Q1. 人工関節術後に特有なDVT発症のメカニズムは?
 全人工股関節置換術(total hip arthroplasty,以下THA)のDVT発症メカニズムの3大要因は,術前の運動不足や術後の安静による血流停滞と,術創周囲の血管壁の傷害,および周術期出血による血液凝固能の亢進である.また,全人工膝関節術(total knee arthroplasty,以下TKA)では,上記の危険因子に加え駆血帯の使用による血流停滞もリスクを増大すると考えられる.
Q2. DVT発症予防のための工夫は?
 DVTの予防法として,脱水の防止,下肢挙上,足関節運動,早期離床,抗凝固剤の予防投与,弾性ストッキングや空気圧迫装置の使用などがある.当科では2種類の空気圧迫装置を使用し,その臨床評価を行っているので後述する.
Q3. DVTがみつかったらどうするか?
 DVTでは,肺塞栓症(pulmonary embolism,以下PE)を起こさないことが重要である.DVTの治療には,抗凝固剤の投与が必要である.また,PEが疑われる場合には,早期の抗凝固剤の投与とともに緊急の肺動脈造影など集学的な検査が必要であり,専門医へのコンサルタントが不可欠である.



脳卒中患者のDVT
平野照之・橋本洋一郎・内野 誠
Key Words:奇異性脳塞栓症 右左シャント 深部静脈血栓症 肺塞栓症 静脈血栓

内容のポイントQ&A
Q1. 脳卒中発症要因はDVT発症と関係があるか?
 DVTに由来する静脈血栓が右左シャントを通じて脳塞栓症をきたす可能性がある(奇異性脳塞栓症).また,アンチトロンビンIII,プロテインC,プロテインSなどの血液凝固線溶系の異常により脳梗塞とDVTが同時に発症することもある.
Q2. 脳卒中発症後のDVTはなぜ起こるか?
 脳卒中後の長期臥床により下肢の静脈うっ滞が生じDVTを発症する.弾性ストッキングの着用やヘパリンの使用により発症率を減らすことができるが,発症早期からのベッドサイドリハビリテーションが最も効果的である.

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