リハビリテーション医療者のための臨床誌 
Clinical Rehabilitation

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2000年10月

特集
脳卒中再発例のリハビリテーション


脳卒中再発のリスクと予防
高木 誠
Key Words:脳梗塞,再発,危険因子,抗血栓療法,頸動脈内膜剥離術
Key Questions
Q1. 再発の頻度は?
Q2. 再発に関連する因子は?
Q3. 再発予防は可能か?
Q4. 再発予防の具体的方法は?
1. 脳卒中は年間約5%,5年間で約30%の再発率があるが,特に初回発作から最初の1年間の再発率が高い.
2. 脳梗塞では臨床病型により再発率が異なり,アテローム血栓性,心塞栓性,ラクナ梗塞の順に再発率が高い.また再発に関連する因子として,高齢,男性,糖尿病,心疾患(心房細動,冠動脈疾患,心不全)などが明らかとなっているが,特に高血圧と心房細動が重要である.
3. これまでに行われた多くの無作為化対照試験により,いくつかの治療的介入により脳卒中の再発を予防できることが明らかとなっている.
4. 現在のスタンダードとして米国心臓病協会が発表した脳卒中の二次予防のためのガイドラインが参考となる.特に有効性が確立している治療法には,高血圧の管理,心塞栓性梗塞に対する抗凝固療法,非心原性梗塞に対する抗血小板療法,70%以上の頸動脈の症候性狭窄に対する頸動脈内膜剥離術がある.

 

脳卒中再発例のみかた
橋口良也・寺崎修司・橋本洋一郎
Key Words:脳卒中,脳梗塞,再発,リスク管理
Key Questions
Q1. 再発を疑う症状と所見は?
Q2. 診断のポイントは?
Q3. 併存疾患の管理は?
Q4. 治療の進めかたは?
1. 既存の神経症状に片側顔面・上下肢の急な脱力・感覚障害,急な視力低下もしくは視野欠損(特に片側),発語障害・言語理解障害,誘因のない突然の激しい頭痛,原因不明のめまい・ふらつき・急な失神(特に前駆症状を伴う場合)などが出現したときに再発を考える.
2. 頭部X線CT,頭部MRI,MRA,神経超音波検査,脳血管造影などの補助検査にて正確な臨床病型,発症機序の診断を行う.
3. 脳卒中急性期には病巣周辺部を含めて脳循環自動調節能が喪失しており,不用意な降圧が病巣の拡大につながりかねないので,くも膜下出血以外降圧には注意が必要である.
4. 再発例においてはすでに再発予防のための抗血栓療法(抗血小板薬,抗凝血薬)や降圧薬,心不全に対する利尿薬などの治療的介入を受けている場合が多く,急性期治療を行ううえでこれらの治療を継続するかどうかが問題である.

 

再発例のリハビリテーションのポイント
佐直信彦
Key Words:脳卒中,再発,リハビリテーション,機能的状態,帰結
Key Questions
Q1. 再発病変の局在,病型の異同は?
Q2. ゴール設定のポイントは?
Q3. プログラムの組み方のコツは?
Q4. フォローアップのポイントは?
1. 再発病変の局在の異同は,神経学的機能障害の多様性と機能的状態の帰結・予後にかかわる.再発病型の異同は,脳血管障害の成因の治療そのものにかかわる.
2. 機能障害,能力低下,社会的不利を包括的に評価し,患者・家族のQOLや家族の介護能力など個別性をより重視し,社会資源を活用した最適の選択をする.
3. リハビリテーション治療の原則は,現症の機能的状態を測定・評価し,プログラムを立案することであり,再発例だからといって本質的には変わるものではない.
4. 長期生存の脳卒中患者に携わるリハビリテーション医は,生命予後に見合った,長期にわたる心身機能の維持と,危険因子を含めた健康管理に主治医として責任をもつことが大事である.

 

症例にみるリハビリテーションの経験 I
聴力障害を呈した脳出血再発例のリハビリテーションの経験

木原 薫
Key Words:脳出血,再発,聴力障害,リハビリテーション
Key Questions
Q1. 特に問題となった障害は?
Q2. リハビリテーションプログラムは?
Q3. フォローアップは?
Q4. 家族をいかに支えたか?
1. 両側性の被殻出血で,再発当初は体幹障害,嚥下障害,排尿障害,痴呆などすべてみられたが,全身状態が安定し,精神症状が徐々に軽減するにつれコミュニケーション障害がリハ阻害因子となり,その原因として聴力障害が疑われた.
2. コミュニケーションが全くとれないため,耐久性向上や関節拘縮防止を主体としたリハ訓練から開始し,ジェスチャーや筆談を用いてある程度コミュニケーションがとれるようになってから体幹障害に対して移乗・移動動作獲得のための訓練を行った.
3. 再々発を防止するために,高血圧症,糖尿病といった基礎疾患のコントロールが重要である.また,出血傾向に関しても経過観察が必要である.
4. 痴呆,および聴力障害に基づくコミュニケーションの障害が本人,家族にとって最も困った問題であり,ジェスチャーや筆談を用いてコミュニケーションをとるように指導することで患者本人と家族の対話ができるようになった.

 

症例にみるリハビリテーションの経験 II
痴呆と嚥下障害が顕著であった症例

渡辺 淳・藤岡 真・小貫 渉
Key Words:痴呆,嚥下障害
Key Questions
Q1. 特に問題となった障害は?
Q2. リハビリテーションプログラムは?
Q3. フォローアップは?
Q4. 家族をいかに支えたか?
1. 痴呆と嚥下障害であった.
2. 1回目の入院では起居移動動作と排泄動作改善のためのプログラムを行った.2回目の入院では,食事の介助量軽減のために内視鏡的胃瘻造設を行った.
3. 訪問診療で行った.
4. 家族の介護量軽減のため,入院中に家屋改造を行い,在宅後は訪問看護,デイサービス,ショートステイの利用をすすめたが,痴呆が重度で日常活動作が維持できなかった.

 

症例にみるリハビリテーションの経験 III
心不全・糖尿病のコントロール,内服薬の調節がADLに大きな影響を与えた血管性パーキンソニズム症例

門 祐輔・中村紀子・中川雄二
Key Words:血管性パーキンソニズム,ADL,心不全,薬剤,糖尿病
Key Questions
Q1. 脳血管障害の再発と併存疾患の悪化の鑑別は?
Q2. 心不全患者のリハビリテーションの進め方は?
Q3. ADLに影響を与える薬剤は?
Q4. 在宅生活を維持する工夫は?
1. もともと麻痺や平衡機能障害などをもっている症例がADL低下をきたしたときは,脳卒中の再発と併存疾患の悪化の鑑別は意外と難しい場合がある.神経学的所見や画像所見の変化がないかなど,総合的に判断をする.
2. 心不全患者は廃用症候群を合併していることが多い.息切れなどの自覚症状に注意しながら,少量頻回訓練でリハビリテーションを進めていく.
3. 睡眠薬,抗不安薬,抗ヒスタミン薬など多数あり,ADL低下症例ではその原因としての使用薬の検討は欠かせない.
4. 心不全のコントロールとともに,ベッド周囲の整備やトイレ,入浴の工夫,訪問リハビリテーションの体制整備など,維持的リハビリテーション,介護体制の確立が必要である.

 

症例にみるリハビリテーションの経験 IV
過睡眠,記憶障害など多彩な症状を示した3症例

川北慎一郎・立野 勝彦
Key Words:傍正中視床中脳梗塞,脳塞栓,過睡眠,垂直性眼球運動障害,見当識障害
Key Questions
Q1. 特に問題となった障害は?
Q2. リハビリテーションプログラムは?
Q3. フォローアップは?
Q4. 家族をいかに支えたか?
1. 脳底動脈分岐部の脳梗塞は突然の意識障害や複視などで発症することが多いが,その後過睡眠,行動異常,記憶障害,不随意運動など多彩な症状を示す.急性期には過睡眠,そして慢性期には痴呆と眼球運動障害が問題であった.
2. 症状が変動しやすいので,意識障害と過睡眠および再発による悪化かをしっかり判断して,リスク管理をした座位訓練の施行が必要であった.また痴呆と上下方視制限を考慮してADL訓練を進めた.
3. 椎骨脳底動脈系の形成異常や脳塞栓が主な原因であることが多いので,その検索と対応(抗凝固療法など)を十分に行いフォローすることが必要である.
4. 再発しやすく,重篤な状態(無言無動)になりうる脳梗塞であることを説明したうえで,ベッドサイドでのADL訓練の協力を求めた.

 

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