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#11 人と人を近くする音楽

 Hi! エリックです!僕がミュージシャンとして食べていけるようになったのは10 年くらい前からかな。それ以前は、もちろん下積みの日々。大学卒業後は楽しい貧乏生活を5、6年続けた。アメリカや日本でウエイター や工事現場のおにいさんなど、いろいろなアルバイトをしながら音楽をやってきた。

 親は反対しなかった?って、たまに聞かれるけど、うちの場合、けっこう自由にさせてくれた方だと思う。小さい頃は、人間としての基本のルールをかなり厳しく躾けられた。そして、それ以外はほとんど口出しを受ける事なく、決断は自分で、というような教育方針だった。小学生の頃、家の後ろには高〜〜〜い柳の木があった。ある日、僕がその木を登りはじめると、お母さんが心配そうな声で "Ohhh... be careful Eric!"と言った。だけど、横にいたお父さんは落ち着いた声で "Don't worry honey, let him climb. He'll be OK." と、僕が木を登っていくのをじっと見ていた。危なくてもとりあえずやらせてくれる、木の上から見たその二人の姿をいまでもはっきりと覚えている。

 そんな両親がはじめて僕の音楽に反対したのは、僕が26才の頃。ミュージシャンになるという僕の夢が、ただの一時期(phase )のたわ言でないと気が付いたのか、とにかく、いろいろと激しく言われた。まー、親にしてみれば、それまで、ずっと我慢して言わないできた事がいっぺんに爆発したという感じだったんだろうね。

 その後のあるクリスマス休みに、お母さんと一緒に車に乗っていた。ふと気がついたら、お母さんが泣きそうな顔をしていた。僕が"What's wrong?" と聞くと、お母さんは "I always think of you when I listen to this song." って、優しく言った。車のカセットプレーヤーにはArt Garfunkel の Break Away がながれていた。

Though I won't stop you
I don't want you to Break away
Fly across your ocean...

 もしかすると、もともとは失恋の歌かもしれないけど、お母さんにとってこの曲は、僕とお母さんの関係を歌っているように思えたみたい。僕の場合、本当にfly acrossしたocean もあったし、ミュージシャンへの道のりという ocean もあった。日本に行くこと、そして、ミュージシャンになること、いろいろな意味で僕は Break away をしていた。その昔、柳の木を登った時の様に、させたくない事でも、だまってやらせてくれたお母さん。この曲のおかげで、僕は初めて、彼女の立場から自分のことを見ることができた。そして、それは僕とお母さんの間のコミュニケーションをもう少し、風通しのいいものにしてくれた。

 Art Garfunkel のグレイテスト・ヒッツ、 "The Art Garfunkel Album" (日本版名:天使の夢)の中でBreak Away と並んで、特に好きな曲は "I Only Have Eyes For You" と "99 Miles From LA"。
 "I Only Have Eyes For You" は Art の美しい声をいかした曲。豪華なアレンジが、聴く人を贅沢な気持ちにさせてくれる。"99 Miles From L.A." はとてもビジュアルにつくられていて、そのわかりやすい歌詞を聴いていると、まるで自分が車で L.A. に向かって走っているような世界に入り込める。

Keeping my eyes on the road I see you
Keeping my hands on the wheel I hold you
99 miles from L.A.
I kiss you, I miss you
Please be there


 ハイウエイ を見ているのに、きみのことしか見えない。ハンドルを握っているのに、きみを抱いていることしか考えられない。お願い...L.A. にいておくれ...。こんな気持ちになったこと、あるよね!
 The Art Garfunkel Albumは声と emotion が主役の、人と人をちかくにするような音楽だね。