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三重シューレについて

フリースクール三重シューレは、子どもたちの新しいタイプの居場所・学びの場です。
学校に行けない、行かないけれども、安心できる居場所がほしい、仲間と活動がしたい、学びたいと思っている不登校の子どもたちが、ゆったりとした時間の中で楽しく活動しています。
「自由・自治・個の尊重」を基本理念にする子どもを主体とした学びの場として、不登校以外の子どもが三重シューレで活動することもできます。このような子どもの居場所を作ったNPO法人三重シューレ代表の石山さんに話を聞きました。

誰のための学校なのか?

フリースクールを始めようと思ったきっかけは?

 フリースクールを始めるきっかけについては、私のこれまでの経歴からお話したほうが良いかもしれません。

 私は、これまでいくつかの企業で働き、その後私立高校で教師を11年間していました。そのうち9年間担任をやってきましたが、とても忙しく、ストレスが溜まり腹膜炎の手術をしました。

なぜそんなに忙しいかといいますと、生徒の就職や進学のための指導をするのですが、就職率や進学率を上げ、出席率を良くし、校則違反を出さないなどの「管理」重視の学校運営がされていました。そのような管理が進む中で、いわゆる不登校の生徒が増えていきました。

 私は、不登校の生徒の多いクラス担当を任され、どんな問題を抱えた生徒なのかと思っていましたが、実際に接してみると人間的には何の問題もない、ただ先生をはじめ周りの人からの「評価」や「指導」づくめの学校生活に馴染めなくなった生徒達ということがわかりました。

そして、その生徒達を教室に戻すことが学校における私の評価となるのですが、それは学校のためであり、生徒のためではないことに納得できず、反発を感じました。一般的に学校にとっての不登校対策とは、生徒を学校に「引っ張り出す」か、生徒の家に「乗り込んでいく」ということでしかありませんでした。


生徒と先生の両方がストレスを抱えてしまっていたのですね?

 私自身もそのようなストレスを抱えた中で、学校のためではなく、子どもと自分のために働きたいという意思を強くし学校を退職いたしました。そんなときに日本のフリースクールの先駆けともいえる「東京シューレ」代表の奥地さんに出会いました。
東京シューレに行くと、生徒は自分の居場所を見つけ、自分の言葉で自分のことを語り、自分と向き合って生活していました。またスクールの運営についてもスクール内のことはすべて自分達で解決し、お互いを認め合う民主的な場でした。そのような雰囲気にひかれ、東京シューレのスタッフとして一年間を過ごしましたが、子どもにとっても、自分にとっても大変居心地のいい場所でした。

フリースクールを三重につくろう

そこで自分でもフリースクールをやってみようと思ったのですね?

 自分も不登校の子どもたちと活動するフリースクールを作りたいと思い、その場所として妻の実家がある三重県の志摩に一家で引っ越しをしました。
それが2000年の春で、東京出身の自分には知り合いもおらず、三重県における不登校の実情を知りたいという思いもあり、高校の講師をして生計を立てていました。驚いたことに教室の緊張感は三重でも全く同じで、生徒は悩み、決してみんながみんな希望に満ち溢れているというわけではありませんでした。

三重県の不登校の子ども達の現状は

 最新の統計では、全国の不登校児童・生徒の数は12万人、三重県の小中学校では、約2,000人となっていますが、統計上、保健室登校や校門タッチ登校などは不登校としてはカウントされていませんので、実際にはもっとたくさんの不登校もしくは学校に行きにくい生徒がいると思われます。

どのような形でフリースクールを始めたのですか?

 そのような中、2002年5月には不登校の親御さん達と市民が中心となってフリースクールを作るための活動を始め、高校の講師をやる傍ら「三重にフリースクールを作る会」というNPO法人を2002年10月に立ち上げ、12月には週1回のペースでフリースペースを始めていました。
このような活動を広めていく中で、三重県遊技業福祉連合会からフリースクールの場所を無償で提供していただけるお話をいただきました。こうして2003年5月には、全国でも例のない民間とNPOとの協働で「三重シューレ」は津駅徒歩2分という好立地で始めることができました。


三重シューレでは、どのような活動をされていますか?

 現在、県内各地から約20名の子どもが通ってきています。
「東京シューレ」に倣い、「自由、自治、個の尊重」を理念として、スクール内でのことはすべて子どもたちが決め、お互いを認め合う場を作っています。
常勤のスタッフは3名ですが、スタッフが何かを指導したり、評価することはありません。あくまで子どもたちの決めたことのサポートに徹し、対等な人間関係を構築しています。対等な人間関係なので、スタッフが子ども達を評価することはありません。自分が決めたことに対する評価は自分自身で行います。評価を自分自身で行うことで「自己肯定感」の土台が出来ると考えています。

評価をしないということ

「評価をしない」ことで「自己肯定感」を大きくするとは?

 今の子どもは、他からどう思われているかをとても気にしており、生まれた時から大人の望む「いい子」や「笑顔」を求められ、異端者にならないように周囲に気を使い、親や学校は成績で評価しますので、他人の評価によって、自分の価値を計るようになります。そうすると他人の評価とありのままの自分にギャップが生じ、そのギャップが大きくなればなるほど「自己否定感」のほうが大きくなってしまい、評価されることが苦痛になってきます。だから三重シューレでは子どもを評価しません。
「自己肯定感」は、信頼しあえる「人間関係」のなかで、「自己決定」を積み重ねることで育むことができると考えています。それが本人の意欲につながり、自分の未来の希望につながると考えており、三重シューレは、そうなるための場を提供していきたいと考えています。

三重シューレでは高校卒業のためのカリキュラムもあるとか

 三重シューレでは、いわゆるレギュラースクール(学校)における教育もカリキュラムとして用意はしてあるものの、それ以外にも絵を描いたり、写真の撮影、バンド活動、スクール外での体験学習(イベント)などがあり、それをやるかどうかは本人の選択です。
興味のあることをやればよいし、やりたくなければやらなくてもよい、スクールに来る、来ないも自由です。三重シューレでは、不登校の子どもとレギュラースクール以外に学びの場を求める子どもに対して、広い意味での教育の場を保障し、子どもの成長の支援と子どもを主体とした教育の創造を行っています。

フリースクールを知ってもらいたい

フリースクールの運営で苦労されていることは何かありますか?

 やはり「不登校」や「フリースクール」に関する理解が乏しいと感じています。
子どもが通学時間帯以外で三重シューレに来る途中で知らない大人から「昼間から何しているのか」と問い詰められたりしたこともありました。これからもフリースクールの活動を世間に知ってもらうため、バンド活動や写真展、市の行事などに積極的に参加して、外部の人達に「フリースクール」を正しく知ってもらうようにしていきたいと考えています。

資金面でのご苦労もおありだそうですね。

 三重シューレは、月会費と寄付だけで運営されています。
常勤のスタッフは3名、そのほかに非常勤のスタッフが数名おります。このスペースは、スクールの開設当初から三重県遊技業福祉連合会から無償でお借りしており、家賃の負担がなく、大変助かっています。パソコンはリユースPCを整備してくださるNPOからの寄付を頂いたり、キリン福祉財団や岡田文化財団などから活動費の助成を受けています。

不登校支援の情報を提供

みえ不登校支援ネットワークの立ち上がりました。

三重県内の不登校児童や生徒達に対して、途切れない成長支援と当事者に合った支援の選択を可能とするために、県内の教育、福祉、医療、労働、保健、心理などの不登校に関わる各分野の団体やサービスが行政と民間の枠を超えて、協働・設立した「みえ不登校支援ネットワーク」を立ち上げることができました。
このネットワークに参加している県内の機関や団体、サービス等を紹介した冊子「つながる安心と育ち」を作成し、不登校に関わる機関・団体および県内の各学校に配布しました。 併せて「みえ不登校支援ネットワーク」のホームページ(PC、携帯向け)をオープンし、随時情報の更新することで、必要としている当事者や保護者、関係者に最新の情報提供を行っています。また、当事者や保護者からの声を集めています。

ネットワーク化することで不登校支援の必要な人に必要な情報を的確に届けられますね。

学校現場ではネットワークの必要性は感じられてはいるものの、実際に当事者のもとに情報が届いていないことが分かりました。今後の大きなテーマとしては、ネットワークの情報を県内の全児童、生徒に行き渡らせることにあります。 そのため、ネットワークとそのホームページの存在を知らせるためのチラシやポスターを作成し、県内各小中高校の全生徒に情報が行き渡るようにします。

県内の関係機関、団体による不登校フォーラムを開催するとともに、ネットワークの参加者会議を開催し、それぞれの団体等についての理解を深め、ネットワークの情報が必要としている人に届けられるような情報循環の仕組みについて更に改善をしていきます。

これからも、不登校の子供達とその保護者の方々が必要な支援を選択し、途切れない成長支援を受けられる環境を整えるためにこのネットワークの充実に取り組んでいきます。

さまざまな学びの場として

三重シューレをこれからどのようにしていきたいですか?

 英国で始まったフリースクール「サマーヒル」ができたのは、1924年であり、海外では一般的な存在になっています。アメリカにも、クロンララをはじめたくさんのフリースクールがあります。韓国では近年、行政の負担でフリースクールが作られています。日本では、「東京シューレ」が1985年に設立され、フリースクールの草分けと呼ばれています。
このようなフリースクールが三重県各地に設立され、レギュラースクールを含め、子どもたちが自分の意志で学びの場を選択でき、それを認めることを許容する社会になることを私たちは願っています。